2025/05/16 10:51

今シーズンは、レースがトレンド素材となって注目されています。

従来のフォーマルなシーンでの使用だけでなく、近年ではカジュアルアイテムなど、幅広いスタイルに取り入れられるようになっています。

その結果、レースは世代を問わず、多くの人々に愛される存在となっています。

また、現代では様々な種類のレースが存在します。その華やかな魅力や特徴について掘り下げるために、レースの歴史をひも解いていきましょう。



   レースの歴史 ~その起源と進化~


レースの歴史は、紀元前の狩猟時代まで遡るとされますが、本格的にその美しさが注目され始めたのは、14世紀末から16世紀初頭にかけてのことです。

現代のような装飾を目的とする独立したレースが生まれたのは、1540年頃とされています。

その後、レースはヨーロッパ各地で発展を遂げました。ベルギーのフランドル、イタリアのヴェネツィア、フランスのアランソンや.

シャンティでは、それぞれ独自のスタイルが生み出されます。

手作業で生産されていた中世、レースは膨大な時間と熟練の技術を必要とし、そのため王侯貴族のみが手にすることのできる贅沢品でした。



   レース技術の進化


15世紀末から16世紀初頭にかけては、ニードル・ポイントレースやボビンレースが登場し、イタリアのヴェネツィアでその技術が確立されました。

17世紀には、フランスでバロックスタイルが流行し、レースの装着が増加。ルイ14世を筆頭に、多くの貴族がその豪華さに魅了されました。

しかしフランス革命や産業革命の影響で高価な手工レースは衰退。

1813年にはリバーレース機が発明され、大量生産が可能となりました。

1840年には、イギリスのヴィクトリア女王がウェディングドレスにボビンレースを採用。このエピソードは、一般女性へのレースの普及に大きな影響を与えました。



   リバーレースの登場と進化


リバーレースの歴史は、1813年にイギリスのジョン・リバー(John Leavers)によって誕生しました。

彼の発明によって、糸を撚り合わせた優雅で複雑な模様を持つレースが機械で製造可能となり、それまで手工芸でしか作られていなかったレースの新しい時代が幕を開けました。

リバーレースの特徴は、機械製造でありながら手工芸の技術を応用している点です。

極細糸を複雑に絡み合わせることで、立体的で繊細な模様を作り出します。

1816年、この技術はフランスに渡り、フランスの産業として大きな発展を遂げました。現在、世界に現存するリバーレース機の約80%をフランスが所有していると言われています。

さらに、リバーレース機の製造は1987年に終了したため、現在では設備を保有し、熟練のメンテナンス技術を持つ限られたメーカーだけが生産を続けています。

リバーレース機は特別な技術を必要とするため、保有していても維持が難しいとされています。


                                         solstiss社のリバーレース(仏・ソルティス社)

                        


   リバーレースの希少性


リバーレースは、その製造に必要な機械が1987年以降生産を終了しているため、現存するリバーレース機を保有する数社のみが生産可能な、大変希少で最高級の機械レースです。

この機械は約200年前に開発されたものであり、現在でも当時と同じ設備を丁寧にメンテナンスしながら使用されています。

さらに、リバーレースの生産には非常に細やかな準備が必要です。機械のメンテナンスや柄替えの調整は技術的に難しく、重要な作業のひとつとなっています。

この過程では、リバーレース機それぞれの状態だけでなく、その日の天候も考慮しながら使用する糸を慎重に選定する必要があります。こうした緻密な工程を経て、リバーレース特有の立体感と繊細なデザインが生み出されます。




   熟練職人が生み出すリバーレースの魅力


リバーレースは、その美しい仕上がりの裏に熟練職人たちの卓越した技術が隠されています。

1台のリバー機には約5,000枚ものボビンが使用されており、そのボビンを厚さ1mm以下の隙間に糸を通すという作業を、すべて手作業で行います。

この繊細な工程には、高度な集中力と技術が必要とされます。

さらに、このリバーレース機を維持するためには、200年以上も昔の設備を丁寧にメンテナンスし続ける必要があります。

職人たちはその技術を継承しながら、時代を超えた美しさを追求し続けています。

リバーレースは、こうした高度な生産技術と熟練の手作業によって生み出される「最高級のレース」として、その希少性と品質の高さが世界中で評価されています。



   リバーレースの繊細さとその魅力


リバーレースは、芸術品のような繊細さを誇る最高級レースです。

その特徴は、2万本もの糸を撚り合わせて織り上げることで生まれる豊かで繊細な表情にあります。

糸本数が多いことから、他のレースにはない立体感のある複雑で美しい模様が実現されるのです。

この独特の魅力から、リバーレースは「レースの女王」と呼ばれています。

また、リバーレースの美しい模様は『組み紐の原理』に基づいて織り上げられているため、立体的でありながらほつれにくいという特徴を持っています。




 レースの種類


1.刺繍レースの魅力

 刺繍レースは、透かし模様を楽しむことのできる美しい生地です。

 種類によって、用途や特徴が異なります。 それぞれの魅力をご紹介します。


・ エンブロイダリーレース

エンブロイダリーレースは、生地に専用機械を使って透かし模様の刺繍加工を施したものです。

「エンブロイダリー」とは刺繍を意味し、その名の通り耐久性に優れた織物を基布としています。

服地やテーブルクロスなど、幅広い用途で使用される人気のレースです。


・ チュールレース

チュールレースは、透明感のあるチュールを基布にし、刺繍を施したもの。繊細な透け感が華やかな印象を与えます。

刺繍の丁寧さや糸の量が多いほど、その美しさは際立ちます。

ドレスやベールなど、特別なシーンで活躍するレースです。


・ ケミカルレース

ケミカルレースは、刺繍を施した後、化学薬品で基布を溶かし、刺繍部分だけを残したものです。

糸だけで構成されるこのレースは豪華な印象を持ち、ドレスやフォーマルウェアに頻繁に使用されています。



2.編みレース


・ ラッセルレース

ラッセルレースは、糸を編み上げて模様を作り出すレースであり、ラッセル編み機を使用して製作されるものを指します。

その誕生は、高価なリバーレースをより安価に生産する目的から始まりました。

このレースは、リバーレースに似た風合いを持ちながらも、経編機(たてに編んでいく機械)を使用することで、効率的かつ大量生産が可能になりました。

しかし、同じ糸レースでも撚り合わせ組織のリバーレースとはまったく異なるものです。

また、技術の進化によりリバーレースに近い精巧な柄模様を作れるようになり、多様なファッションアイテムに活用されています。

その結果、ラッセルレースはドレスやカットソー、キャミソール、ブラジャーなど、幅広いアイテムに使用され、実用性と美しさを兼ね備えた素材として愛されています。




3.ボビンレース


・ リバーレース

リバーレースは、機械レースの中でもっとも手工業に近いと言われる特別なレースです。複雑な組織を形成し、繊細で優雅な表情を生み出しています。

このレースは、数本の細い糸を撚り合わせて1本にするという技術を用いて作られており、その過程では2万本もの糸を使用し、編速度も非常に遅いのが特徴です。

さらに、製作には熟練した職人の手作業が欠かせません。

また、リバーレース機は新たに製造されることがなく、現在では世界でも限られた場所でしか生産されていません。

そのため、リバーレースは非常に希少な存在であり、機械レースの中でもっとも高価なレースとして知られています。

その特別な美しさは、ウェディングドレスや高級ランジェリーなど、最高級のアイテムにふさわしい素材として選ばれています。



・ トーションレース

ボビンレースを機械化したものは、ボビンに巻かれた糸を交差させ、ジャガード装置を使用して荒い網目模様を作り出します。このレースは太い糸を使用しているため、編み目が粗く、非常に高い耐久性を持っています。

また、細幅のものしか製作できない特性から、縁飾りとして利用されることが多く、さりげなくも存在感のある美しい装飾を提供します。

手作業のような味わいが感じられる、実用性とデザイン性を兼ね備えたレースです。




現代に息づくレースの魅力


レースはその華やかさと繊細さから「糸の宝石」とも呼ばれ、特権階級だけの贅沢品から、現在では多くの人々が楽しめる素材となりました。

ウェディングドレスやカジュアルなファッションにも取り入れられるなど、その活用範囲は無限大です。


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その繊細な美しさと卓越した技術が織りなすリバーレースを纏い、歴史と伝統を感じながら特別な日々を楽しんでみませんか。